レクイエムか?

「カノン…そうだ、その名前…カノンの意味は?」
「…音楽の…一種だ…」
「どんな意味なんだ?」
「メロディが…少しずつ生まれ変わる…そういう意味だと……母さんが…」

第1期の17話で自分を取り戻した少女は、第2期の17話で自分を手放した。
自分では何も決められなかった少女は、最後にたった1人で決めて、自分の意思で消えていった。
家族も友達も全て失った島から来た少女は、家族と友達を全て得た島に還っていった。
たった一つ、叶う事のなかった恋心だけを抱き締めたままで。

私は一騎の乗ったマークエルフの腕をぶった切るという最悪の出会いをした1期10話から、ずっとカノン・メンフィスが好きだった。
そのやさぐれた性格と、笑顔ひとつない仏頂面と、櫛すら通した事がないのではないかというボサボサ頭と、ルガーランスを振り回す赤いベイバロンが好きだった。
真面目過ぎるほど真面目な彼女と、彼女の命を救ってくれた憧れの存在たる666(トリプルシックス)との掛け合いが好きだった。
温厚な一騎をイラつかせるほど、蔑んだように見て、冷たい物言いをする彼女が好きだった。

「前はいた…だが今はもういない!」
フェストゥムに、そして甲洋にそう応える彼女が好きだった。
「島には私が残る事になった!」
捨て駒になることに喜びすら感じていた彼女が好きだった。
「おまえはいい。憎まれ役は私がやる。私はこの島の人間ではない」
島の人間である道生を止め、咲良を斬ろうとした彼女が、そしてその咲良にちゃんと謝る律儀な彼女が好きだった。
「この島では、死んだ者の事を誰も忘れないんだな」
羽佐間の家で、学校で、町で、満遍なく皆と触れあい、少しずつ人間性を取り戻していく様がとてもとても好きだった。
「命令がないと…困る…」
本気で困りながら、どんどん年相応の女の子らしくなっていく彼女がとても好きだった。

ダブリンで、友達が同化され、家族がいなくなり、街そのものが消えていく恐怖の中、ボロボロで助けられた彼女は、人類軍の兵士になった。
同化された仲間を数え切れないほど殺し、それ以上にフェストゥムを殺しながら、早くいなくなりたいと願って生きていた。
あのまま戦い続けていても、いずれどこかでのたれ死んでいただろう命が、息を吹き返し、生まれ変わった。
パイロットの中では唯一持っていなかったフェストゥム因子を植えつけ、敢えて死に近づいてまで戦おうとしたカノン。
仲間たちは、戦いしか知らなかったカノンが少しずつ想い出を作って行くその姿を見て、大人たちが自分にしてくれたことを再認識していく。
そんな、この物語のキーとなる彼女がとても好きだった。

彼女はもういない。
劇場版では最悪の状態まで同化されかけた彼女は、再び一騎に助けられたものの、体内の同化率は限界値に達してしまった。
工学の道を選びながらも、後輩たちと島の危機に再びドライツェーンに乗り込んだ彼女に現れた力は、質量減衰を代償にした未来予知。
枝葉のように伸びた数多の未来を消していき、たった一つの正解を導き出す戦いを孤独に続けた彼女は、ついに未来を見つけ出す。
けれどそれは絶望の未来。正解につながっても、あってはならない未来。誘惑という名の甘い未来。

彼女はもういない。
2期第1話で一騎に貰った飴をひとつ、ふたつ口に含み、咲良に教えてもらった字で感謝と別れの言葉を綴る時、カノンはどんな気持ちだったのだろう。
最後の飴は、その時の彼女の体重より重かったんだろうか。
大好きな人が作る「楽園」のメロンフロートではないけれど、飴は甘く、彼女の寂しい心を癒しただろうか。
エゴが見せた夢。これほどまでに深い感謝と自己犠牲を示した彼女が、最後に、自分の中に眠るほんの小さな欲望を見た。

彼女が残したエインヘリアルモデルは、それを理想としたやせバッハでも成し得なかった真の「パイロットを死なせない機体」だと言う。
因子を持たないオルガの記憶は残っても魂は空に還っていったけど、カノンは道生や衛や広登がいるフェストゥムの地平へと還っていった。

孤独な戦いを選んだ彼女は、かつての冷徹な軍人の顔を見せていたけれど、その頃には絶対にしなかった、周りの人への思いやりといたわりの優しい表情をそれ以上に見せていた。
自分の孤独な戦いが、仲間たちの新たな希望を見出したことを確認して、ただ静かに微笑んでいた。
大切な友達と、家族と、仲間と、平和を教えてくれた島への想いでいっぱいで、恋愛までは欲張れなかったんだろう。
彼女はいなくなり、そして物語は最終局面へと向かっていく。

そして最後の一枚もまだ残っている。
絶望しかないけれど、希望はまだある。
乙姫はいなくなったけど、織姫がいる。
紅音はいなくなったけど、甲洋がいる。
美羽がいて、エメリーがいて、操がいる。
フェストゥムも、人類軍も少しずつだけど変わっている。
何より、まだ皆、ここにいる。
そして竜宮島は、ここにある。

第1期は21話から先は、ほぼ1話に1人ずついなくなった。21話で咲良、22話で衛、23話で道生…そして24話では衛や剣司の母、手塚もいなくなった。最終話の25話(SPバージョン)では乙姫が、そしてついに総士がフェストゥムのいる世界へ向かった。
劇場版や2期を放映している今は咲良も総士も無事に戻り、乙姫は消えたけど織姫が生まれ、一騎の視力も回復しているとわかっているけど、1期が終わった段階では続編どころの話ではなく、北極のミールは倒したもののこれで終わりとはとても思えない(そして実際終わってなかった)暗澹たる最終回だったのだ。
この時はカノンが無事生き残り、「帰ってきたら母さんと呼んでもいいか」という特大の死亡フラグを見事へし折って帰還したことだけで十分であった。

カノンはもういないので、今回はその心配だけはしなくてよくなったと安心できる。<前向きな後ろ向き発言

さて多くの人はきっと、カノンの恋心が成就しなかった事にせつなさを感じていると思う。
しかし、実は私はカノンが一騎を好きという事については「うん、ま、いいんじゃない、カノンが好きなら」という程度である。
なんだかんだで王道好きの私のこと、「ええ?意外!」と思われるかもしれない。
キャラが主人公と関係が深ければ深いほど重要性も増すので、自分が好きなキャラがそうなること自体は、非常に喜ばしい。
カノンが一騎を好きというのは、エピソード的にも必然であり、出会いも衝撃的であり、過程も納得できるものなので、別に反対するとかではないのだが、熱狂的に応援するというほどでもない。一騎は総士以外にもモテモテだなと思う程度である。

実は私は、カノンは総士とくっついたらいいのにと思ってた少数派である。
総士は人外となった今はどうなのか知らんが、1期ではすっげーわかりにくいながらも、「実はゴリラが好き」という完全なる死に設定があった。
このファフナーのスタッフは設定をすぐに忘れて贔屓の引き倒しをするので、設定など全く当てにならんのである。
誰だ「真矢は適正は高いけど耐性が低いんですよ」などと、この私に向かって今さらそんなご丁寧にアホ設定のご説明をするのは!(怒)知ってるわ、そんなこと!(怒怒)
「麗しきホモ物語」の一方で、「真矢っち愛され伝説」でもある本編を見ていれば、あのゴリラが設定どおり耐性が低いわけなどないだろう!!
どんなに低くてもヤバくても、ジーベンが明らかに子宮のあたりまでニヒトのグラビデボールで消されてても、スタッフ補正で全部ノープロブレムになるんだよ。遠隔攻撃だから、近距離戦闘の多いカノンより長く乗ってても全然大丈夫なんて後付け設定が出て来るんだよ。総士も「彼女の耐久性は桁違いだ」なんて言い出すんだよ。どんなことがあっても生き残るんだよ。何があっても死なないんだよ。あと絶対パンツも見えないの。残念でした。

…怒りのあまり話がそれた。すんません。
声があれほどまでのドブスでさえなければ、クソな演技がもう少し上手でさえあれば、私もここまであのゴリラを苦手とはしないのだが…いや、それにしてもスタッフに愛され過ぎている贔屓の引き倒しぶりがヒドいので、やはり無理かもしれない。
ゴリラ擁護のコメントはご容赦のほど。北極ミールもビックリの冷たいレスしか返せませんゆえに。

総士は真矢が好きという設定があり、それっぽい素振りも見せたりするが、翔子が死んだ途端に遠慮もクソもなく一騎にアタックを始めたゴリラにとっては総士などただの「大事な一騎くんをホモの道に誘う天敵」であるから、2人の会話は全く噛みあわない。
総士は翔子に対する冷酷さとは裏腹に、乙姫に指摘されまくるほどのゴリラ贔屓でもあったのだが、そんな程度の好意では視聴者にも全く響かない。というか、総士には誰がどう見ても一騎しかいないのに、何をトチ狂っているのかスタッフは…

そんな中、現れたカノンはちょっとだけ違っていた。
「15分後に浴槽の湯を確認!」
「了解!」
女性全般、かつ一騎以外の男友達にすらさして心を開かない総士が、なぜかカノンとだけはコミカルな会話を繰り広げた。
カードゲームに負けた一騎が洗い物をする事になった時、手伝わないのか?と訊ねたカノンに、手伝ってるやつがいると答えた総士。カノンは半信半疑らしく、2人で様子を見に行くと、そこにはちゃっかりゴリラが一騎の横に陣取っていたのだ。
「ほらな」
「何故わかった?」
「なんとなくだ」
この時の2人の絶妙なコンビネーションが好きで、総士が誰かとこんな風に会話するのは珍しい事もあって、「この2人、似た者同士で実は結構合うんじゃないか」と思ったのがきっかけである。
まぁそんなことになるはずもなく、ならなかったからといって別にどうということもないのだが、レビューをしていた頃の私は、正直なところこんな風に考えていたんだよという暴露話であった。

リリックかつポエミーに始めてみたものの、結局最後はゴリラ観察日記になってしまうのは私の悪い癖かもしれないが、まさかの続編で勢いが衰えるどころか「今回のガンダムは面白い」という評判に負けず劣らずの面白さ(と絶望感)を誇るファフナーも、いよいよさらなる絶望へと向かいそうな後半戦である。
ファフナーって1期の時もガンダム(しかもキャラデザが同じく平井氏の種デス)が対抗馬にいたんだよなぁ…

1期の懐かしいCM。
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この頃は他にPS2で「英雄伝説Ⅲ 白き魔女」や「SHINING TEARS」、ファフナーはPSPで、「ガンダムSEED DESTINY」はゲームボーイアドバンスで出てた。

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電撃大王だかの付録についてたらしいゴリラ。はいはいヒロインヒロイン。

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こんなものも出てたねー。10月27日ってのは2004年の事で、この頃は種デスの放映が中止になった中越地震があったため、よく地震が起きて津波警報が出ていた。
ちなみに、5話くらいだったか、「北島康介金メダル」の速報も流れたよ。アテネ五輪なので「チョー気持ちいー」の時。

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そして出ましたキャラクターソング。こういうものは怖くてフルでなど聞いた事がないのだが、CMで流れる歌を聴くに、一騎が一番マトモに聞こえる。

1期は毎回毎回説明不足にも程がある中、必死に見て自分なりに咀嚼し、レビューを書いていたので本当に思い入れがある。
当時はまだ種やハガレンがメインだったうちのレビューで、ファフナー目当てに来てくれる人もボチボチいると知って張り切ってたものだ。
話は難しいわ、わけはわからんわ、ネタバレは読みたくないわ、設定には頼りたくないわで、本当に苦労しながら書いていた。
スペシャルにも劇場版も驚いたけど、まさか10年以上経って続編が作成されるなんてねぇ…
今さらながら感無量だよ、本当に。

カノンがいなくなった時、とても素敵で哀しいEDが流れたけど、どうしても誰かがいなくなると歌詞が変わってた1期のEDを思い出してしまう。

あたし行かなくちゃ  時は止まるはずもなく
願いは風に消されて 喉は乾いてる

この先には何があるの 2人は平行線
振り向かない 君は強い もう交わらない…
立ち尽くす街は歪み 君がいた記憶だけ
胸の中にあふれ出して 深い海を創り 僕はそこに溺れる


またね、カノン。でもいつでも戻っておいでね。
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